昨年途中から、横浜FCは変わった。
大幅な増資がなされ、実質オーナーが誕生した。あれから結構な時間が経つが、
この1件は自分の経験した出来事に重なる部分が多く、今でも時々、色々な考えが頭に浮かぶ。
私は学校を卒業して某製造業に入社した。まあ、それなりに有名な企業の子会社だった。
この会社で技術の仕事をしていたが、技術の人間には尊敬できる先輩が結構いて、会社自身も
技術を大事にする風潮があった。いい製品も作っていたし、仕事は楽しかった。
一方で、この会社は商売が下手だった。いい製品を持ってはいるが、利益が上がらない。
バブルがはじけて数年後から、赤字に転落した。普通の会社なら危機感を持って再建に望むが
この会社は「それなりに有名な親会社」が面倒を見てくれ、経営陣も親会社からの天下りで
構成されていたから、経営責任も曖昧なまま、長い年月が過ぎた。
そして気がつくと、会社はもう黒字転換は不可能なレベルまで堕落していた。そして親会社は
ついに200名をリストラした直後、会社を株式交換で売却した。恐らくリストラは相手からの
条件だったのだろう。相手の会社は「リストラしません」を世間に公言している、
それなりに有名な製造業の会社だったからだ。
リストラの効果もあったと思うが、業績は回復した。とりあえず赤字幅は大幅に縮小して
何とか企業として存続できるレベルにはなった。
新しい親会社はとにかく「経費削減」が得意で、この方法で何社も買収した企業を存続可能な
ところまでは建て直した。
しかし、この新しい親会社は強烈なまでに、自らの「企業哲学」を買収先に持ち込むことを
行っていた。詳細は書けないが、一言で言うと「北朝鮮株式会社」だ。哲学までならわかるが
「思想」のレベルまで社員に刷り込むのだ。これには辟易した。
それでも、「経費削減」という今までできなかったことを達成してくれたのだから、多少の
腹立たしいことは我慢していた。だがしばらくしてあることに気がついた。
新しい親会社には「技術を大事にする」、「新しいものをつくる」ことに対するノウハウが
全くなかったのである。社長から技術者には「努力、執念、根性」の3文字しか語られない。
物的、人的な強化もなく、戦略も無く闇雲に仕事をしていた技術課はますます沈滞していったのである。
これは技術者であった自分には致命傷だった。
サッカーに例えれば、「守備=経費削減」はできても「攻撃=新製品開発」ができない
チームに変貌したのだ。元々、この会社を選んだ理由が「技術の仕事をして製品を世に送り出したい」
というものだった私にとっては、もう、このチームに残る意味がなくなってしまったのだ…
そして、私はこのチームを去った。
横浜FCに新たに加わった実質オーナーは、勿論、金銭面で苦しいチームを助けてくれた。
では、この先はチームに何を与えてくれるのだろう。食事面でのサポートなど、今までになかった
ものを導入していることは評価している。オーナー側から送り込まれた新しいフロントの方々には、
今までの横浜FCが持っていた長所を活かし、短所を改善する、そんな働きを期待したい。
私がいたチームは、どうやらまた業績が傾きはじめているらしい…